北海道と本州を結ぶ青函トンネルが開業二十周年を迎えた。
廃止となった青函連絡船に代わり、天候に左右されず、安全に旅客や貨物を運ぶ大動脈となった。道民には貴重な財産といえよう。
二〇一〇年度には津軽海峡の対岸で、東北新幹線の八戸-新青森が開業する。青森から伸びて、二〇一五年度には新函館駅開業が見込まれる。
今夏にはトンネル内で新幹線用のロングレールの敷設が始まる。青函の新幹線時代の幕開けに向け、経済活性化につなげる準備を今から急ぎたい。
総工費六千九百億円の世紀の大工事となった青函トンネルは、最初から新幹線仕様で造られている。「無用の長物」とも批判されたが、新幹線が通ってこそ本来の役割が果たせる。
トンネルの旅客輸送は低迷している。開業直後の一九八八年度に三百六万人だった利用客は二〇〇〇年度以降、百六十万人前後にとどまる。
しかし、新幹線が新青森まで来れば、開業効果から青函トンネルを利用して、函館を含め道南を訪れる人たちが増えるのは確実だ。
もう二年しかない。青森の三内丸山遺跡や、道内初の国宝に指定された函館の中空土偶など、縄文文化の発信を一体で取り組めば他地域との差別化が図れる、とのアイデアもある。
東北を旅する人たちが北海道にまで足を伸ばす工夫がもっと必要だ。
さらに、新函館駅開業となれば函館-青森間は四十分程度で行き来できる。札幌と仙台の中間に、一つの経済、文化圏が生まれるとの指摘もある。
海峡を挟んで「近くて遠い」といわれた東北との地域連携をどう組み立てるかが急務だろう。
新幹線を観光や企業誘致の大きな武器として、新たな人や物の交流を生み出したい。
北海道新幹線の札幌延伸で財源問題の与党協議が進んでいる。
新幹線効果を道内の広範囲に及ぼすために何が必要なのか、全道的な視野からの研究も必要だ。
一方、青函トンネルを経由する鉄道貨物輸送は地球温暖化対策の面からもっと着目されていい。国の政策もトラック輸送からの転換を促している。
ところが、貨物列車が待機スペースのない青函トンネルを走ると、速度差から新幹線の運行本数が限られる。
この対策で、JR北海道は大型車両に貨車を丸ごと載せ、速く走る「トレイン・オン・トレイン」の研究開発を進めている。
マイカーを積み込む自動車専用車両の構想もある。こうした取り組みは青函トンネルを生かす。国土交通省は積極的に支援してほしい。
二十世紀に得た大いなる財産を大切に有効に活用したい。
(北海道新聞より引用)
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